8月2日(金)、日経平均株価は前日比で2,216.63円下落し、1987年10月のブラックマンデーに次ぐ下落幅となりました。市場は多少なりともパニック状態になっているのでは、と筆者は考えます。
この記事では、日経平均株価が下落した要因と今後の展望について、筆者の独断と偏見で書いていこうと思います。
- 日経平均株価の下落要因はなんだろう?
- 今後も下落傾向は続くのか?
なお、記事の内容は確実性を保証するものではなく、あくまでひとつの考察としてお楽しみいただき、投資等はあくまで自己判断のもとで行ってください。
日経平均株価の下落要因
アメリカの主要経済指標の悪化
ISM製造業購買担当者景気指数
ISM製造業購買担当者景気指数とは、アメリカ国内の製造業の購買担当者を対象にアンケート調査を実施し、新規受注や生産、雇用などの項目を3段階で点数化して項目ごとにウェイト付けした加重平均により算出されます。
一般的に50を超えれば好況、50を下回れば不況と判断します。
アメリカの主要指標の中で最も早く発表されるため、景気の先行指標として注目されています。
8月1日に発表されたISM指数は、46.8となり、市場予測を大きく下回る形で、前回から1.7ポイント減少しました。
失業率
8月2日に発表された米国失業率は、4.3%となり、市場予測を上回る形で前回から0.2ポイント悪化しました。
失業率の悪化は、個人消費を減少させる要因となりますので、景気動向を判断するのに重要な指標となります。
ただし、注意が必要なのは、経済が悪化しているから失業率が上昇してきていると判断するのは早計です。筆者は、失業率上昇の背景には、経済的な要因というより、むしろ毎年200万人以上がアメリカに入国してくる不法移民といった社会的要因が大きいと考えています。
指標の数値のみで判断するのではなく、数値の増減要因となった背景をきちんと押さえておくことが重要になります。
金融政策の相違
政策金利とは、金融政策上の目標を達成するため、中央銀行が設定する短期金利です。
一般的に、好景気に伴い物価上昇傾向になると、金利を引き上げることで物価の上昇や経済の過熱を抑制し、逆に、不景気によって物価が下落傾向にある場合は、金利を引き下げて消費や設備投資を誘導します。
日本の金融政策
日銀は、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加利上げを決定しました。これは、今年の3月に決定したマイナス金利解除に続く利上げになります。
追加利上げの決定は、2007年以来、17年ぶりです。
また、政策金利0.25%は、リーマンショック直後の2008年に次ぐ水準となります。
なお、金融政策は政府の動向に影響を受けており、9月に予定されている自民党総裁選の結果が多少なりとも影響を与えることは自明と言えます。
アメリカの金融政策
日本が追加利上げを実施する一方で、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9月の利下げを示唆しました。
利下げを示唆した背景には、消費者物価指数の前年同月比の上昇率が、3か月連続で前の月を下回るなど、物価上昇率の減少傾向か続いていることが上げられます。
日本・アメリカの金融政策は対照的なものとなっていますが、これは、両国が急速に進むドル高円安を意識したためと筆者は考えています。
アメリカ大統領選挙
4年に一度のアメリカ大統領選挙が、11月控えており、世界各国が注目しています。
今のところ、民主党候補のハリス氏と共和党候補のトランプ氏で大統領の座を争うことになりますが、トランプ氏は6月下旬に「大統領選挙前に利下げをすべきではない」と発言しています。
FRBは政治的中立の立場を保ちつつ、金融政策が大統領選挙に影響を与えたと批判が出ないように、最大限配慮する姿勢もうかがえます。
今後、9月に開かれる会合やパウエル議長の発言、大統領選挙の行方を注視し、それによって経済にどのような影響があるのかを考察していきたいと思います。
今後の展望
今回の日経平均株価の大幅な下落は、市場のパニック売りである可能性が高いとしつつ、今後、しばらくの間は下落傾向が続くのではと考えています。
筆者がそのように考える理由は以下の通りです。
- ISM製造業製造業購買担当者景気指数は50を下回っており、実体経済上でも成長鈍化の傾向が表れていること
- 日本とアメリカの両国の金融政策が、ドルから円への資金流入を誘導するものであること
- 年初来の日経平均株価の上昇要因が、新規市場参入者による株価押し上げの影響が大きい可能性があり、今回の下落による新規市場参入者の心理的なマイナスのインパクトは大きい
ただし、今後、金融政策の転換や投資家のセンチメントの変化が起こることにより、その傾向は転換することも留意が必要です。
また、9月には自民党の総裁選挙が予定されており、その結果次第では、金融政策を転換する可能性もあると考えています。
いずれにしても、今回の下落を冷静に分析し、今後の各国の経済指標の動向やファンダメンタルズの変化、テクニカル分析上の転換点に注視しつつ、リスク管理された投資行動を心掛けましょう。
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